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新潟大学工学部現地調査第2報

1.信濃川堤外地の液状化跡

三島郡寺泊町地内の信濃川右岸堤外地にある水田に多数の噴砂跡が見つかった。
現場は与板町と寺泊町のちょうど境界付近に当たり,震央からおよそ40km離れた地点である。
単独の噴砂孔では最大で約2メートル程度(図-1)であっ た。
また直線上に並んで居る箇所(図-2)もあり,堤防法線に対して斜めに亀裂が入ったことがわかる。
噴砂孔の多くは堤防寄りに多く見られ,また法尻部の 農道上や排水路でも吹きあがった形跡が多数見つかった。

図-1 信濃川堤外地の噴砂孔
図-2 列状の噴砂孔群(堤防上から上流側を撮影)

2.小千谷市内の埋設管

関越道小千谷インターの南東部,国道117号バイパスの歩道部分に下水道管渠が埋設されており,この管上部の地盤が10~20cmほど陥没していた。 また マンホールが浮き上がっており,浮き上がり量は大きいもので30~40cmに達していた。(図-3) なお,車道部にはほとんど変状は見られず,被害は埋設管周辺に集中していた。 なお道路脇の電柱の傾きが他の区間に比べて顕著に見られた。

図-3 マンホールの浮き上がり

3. JR信濃川発電所山本山調整池および周辺

図-4 調整池川側の擁壁り
国道117号の上にある山本山調整池および周辺の変状を調査した。
下部の調整池については,信濃川に面した導水管側のコンクリート擁壁が継ぎ目部でずれを生じて前面に動き(図-4) 背後の堤体土に沈下が 生じていた。堤体脇を通る道路も沈下を生じセンターラインに亀裂が入っていた。
図-5 調整池内部の亀裂
池の北側は盛土堤体であるが,貯水池内部の石張りに亀裂が見られた。 (図-5)
ただし石張り部分だけが剥離した可能性が考えられる。
堤防の外側ではとくに目立った損傷や 変状は見られなかった。
図-6 導水管の漏水
調整池から発電所に水を落とす導水管の継ぎ目から漏水が見られた。(図-6)

上部の調整池では山側の堤防法面上部にすべりがみられた。 (図-7)完全な崩壊には至っていないが,天端の道路が2カ所ほどで1~2m程陥没しており,す べり面は堤体土のみならず,背後の山の斜面にまで及んでいた。 このすべりによって,鋼製の柵が破断していた。 (図-8)川側の盛土堤体に関しては大きなすべり面や崩壊は特に認められなかった。 ほぼ全区間にわたって堤体天端アスファルトの中央線方向に勾配が付いており,調整池の外側斜面の法肩からおよそ4 メートルほどの位置に亀裂が入っていた。 (図-9)これは天端の小さなすべりと考えられ,本体下部には及んでいない軽微な損傷と考えられる。 ただし一部で は法面の下部に変状が認められた。 なお調整池脇のゆるい斜面には階段状に新しい墓地が造成されており,約40の墓石の内15基が転倒していた。 墓石はW30×D30×H75cmのサイズが 大部分を占めており,底部は接着剤のようなもので固定されていたと思われる。 また下部に6体ほど並んでいた石仏は台座から完全にはずれて約90度反時計回 りに回転して止まっていた。(図-10)

図-7 山側のすべり変状
図-8 堤体土のすべりと柵の破断
図-9  天端付近の亀裂
図-10 石仏の移動
図-11 橋台部の陥没段差
山本山調整池の下部を国道117号が通っていて,導水管の前面は橋梁となっている。
この橋梁の両側,橋台取り付け部の路面がおよそ1m弱陥没していた。 (図-11)

4. 調査地に至る行程,その他で気が付いた事項

  • 瓦屋根の頂部が崩れた家が多く見つかり,震央から比較的距離のある寺泊駅周辺でもみれれた。 一方小千谷市内でも特に外見上大きな損傷が見られない家も多 数ある。
  • 地盤条件によって被害の程度が大きく異なっている様子がうかがえる。 例えば小千谷市の信濃川左岸段丘上の片貝~小粟田間の路面には損傷が見られなかったが, こから1~2km程度離れた低地の千谷地内や高梨,五辺にはいると路面の陥没亀裂が急に現れ,ブロック塀の倒壊や半壊家屋が目立つようになった。
  • 法面吹きつけを行った箇所の剥離崩壊が見られた。 地元住民の証言(現地は未確認)によると小千谷市街地のすぐ近くの信濃川左岸断崖にあった大規模な吹付けも崩落したということである。(図-12)
図-12 信濃川左岸の崩落(山本山から小千谷市街地方面を撮影)

(文責:新潟大学工学部 保坂吉則)